「検査を何度も繰り返して成長ホルモン分泌不全性低身長と診断されたのですが・・」のケースの場合に保険診療で治療を行うべきかということになります。
「低身長は成長ホルモンを打つと伸びると聞きましたが?」で述べましたので、そちらを参照いただくと良いのですが、成長ホルモンの分泌に問題のないお子さんに成長ホルモンを打っても治療効果は期待できないためお勧めいたしません。
また自費で払われる分(医療費の3割かつ高額医療の上限)以外は保険組合から払われます(医療費の7〜9割以上)。小児慢性特定疾患治療研究事業による助成を受けていると自治体から残りの大半が税金から支払われます。また子ども医療助成のある市町村では本来自費で払う分はその市町村の税金から支払われることになります。5歳で治療を始め14歳まで続けたとすると薬代だけで2500万程度かかります。そのうち7割が保険から支払われ、残り3割が自費もしくは自治体の税金から支払われます。
保険や税金はいわゆる公金ですから適切な使用が求められます。効果が期待できない治療に関して、治療をしているという満足感を得る・与えるためだけに公金を使用するということは客観的に考えれば大問題となります。他人の子の効果もない治療に自分の支払った税金や保険費が使われるのは嫌ですよね。自分の子どもに置き換えて考えても効果がないのに効果があると間違った満足感を持ちながら結果としては無意味な治療を続けるのも嫌ですよね。
医療者は目の前の患者さんだけでなく、社会全体のことも考える必要があります。こんなことを真面目に面と向かって説明するのは日本社会でははばかられるので、なかなか聞く機会はないと思いますが、まっとうな医者はこんなことを考えながら治療しています。