インフルエンザの流行を抑えるために必要なこと

 インフルエンザの一番の社会的問題点は日本語名の流行性感冒という言葉からもわかるように流行しやすいということです。ウイルスの型が毎年変わるため毎年のように流行します。そのため毎年、数か月の短期間に大勢の患者が発生するので、なかには状態が悪くなり不幸な転帰となる方も短期間に集中します。特にインフルエンザに対してハイリスクの方(心臓病、呼吸器疾患(ひどい気管支喘息など)、糖尿病、先天代謝異常症、免疫不全、腎臓病といった病気を持っている方や高齢者、妊娠28週以降の妊婦)に注意が必要です。

 

 インフルエンザによる死亡を減らすにはどうすれば良いのでしょうか?早期診断早期治療でしょうか?もちろんハイリスクの方ではそれに越したことはありません。でもそれでも防げるのは一部です。そのため最も良い方法はインフルエンザに罹らないということになります。とはいっても絶対にインフルエンザに罹らないという方法は存在しません。どれだけ予防をがんばっても罹るときは罹ります。でも罹る確率を減らすことは可能です。一人ひとりがインフルエンザに罹る確率を減らすともっとすごいことが起こるでしょう。社会全体のインフルエンザの流行が抑えられる結果、インフルエンザ感染者が減ります。感染者が減ると不幸な転帰となる患者の数も減ります。自分のリスクを下げるだけでなく社会全体のリスクも下げるのです。これはワクチンにおける集団免疫と同じと考えてよいでしょう。

 

 具体的な予防法としては風邪の予防と同じです。手洗いが最も重要となります。咳をしている人はこれに咳エチケットを加える必要があります。マスクも正しく使用すれば有用ですが、使い方を間違えると感染の原因となります。うがいはそれほど重要ではありませんが、水うがいはいくらか効果はあるようです。

 

 さらにインフルエンザに罹患した人は学校や園を休む、会社を休む、人混みを避け自宅安静することで他人にうつすリスクを減らせます。しかし、ここに一つ大きな落とし穴があります。インフルエンザと思っていなくてもインフルエンザのこともあるからです。その場合は知らず知らずのうちにウイルスを撒き散らすこととなります。これにはいくつかのパターンがあります。

 

 一番わかり易いのは先にも述べたようにインフルエンザ迅速検査は万能ではないので誤って結果が出てしまうパターンです。この場合は典型的なインフルエンザでもインフルエンザではないということになっていたり、思い込んでいたりして解熱して早々に人混みに出てしまうことでウイルスを広めてしまいます。

 

 インフルエンザに感染していても微熱などでインフルエンザではなく普通の風邪かなあと思ってしまう隠れインフルエンザのパターンもあります。昔はインフルエンザの検査ができなかったので、流行性があって高熱がでて、倦怠感が強い風邪を(症状としての)インフルエンザと言っていました。実際にそれはインフルエンザウイルスによるものとわかったのですが、インフルエンザウイルスによる感染は必ずしもインフルエンザ症状となるわけではなく、軽症で普通の風邪と変わらない症状(隠れインフルエンザ)もあることもわかりました。このような隠れインフルエンザの場合、ハイリスクでない方にとっては治療も診断も受診もしなくて良いと思いますが、ウイルスを撒き散らすことに対しては別で、インフルエンザと診断され自宅安静している方よりも社会に与えるリスクは大きいかもしれません。そのためインフルエンザ流行期の風邪症状は隠れインフルエンザも考慮して咳エチケットを徹底する、体調によっては早めに学校や園を休む、会社を休む、人混みを避け自宅安静することが必要でしょう。

 

 インフルエンザの流行を抑制するためには普段からの予防に対する意識をしっかりと持つことが最も重要なのです。

 

(備考)

 抗インフルエンザ薬使用で翌年にインフルエンザに罹患しやすくなるというデータも一部報告されていますが、その結果として社会全体のインフルエンザに対する免疫が低下し、その分流行が起こりやすくなる危険性もあるのではないかと危惧しています。

 

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