発売時点でわかっていた問題点

 イナビルは肺(正確には肺胞)に5日間薬が残っているので効果があるとされていますが、本来インフルエンザウイルスの主たる感染場所は鼻や喉などの上気道と呼ばれる場所です。2009年に発生したパンデミックインフルエンザウイルス(パンデミック2009)は肺胞にまで達することもまれにあるようですが、それでも主たる感染場所は上気道です。さらに吸入した薬は口から近い上気道、口から遠い気管、さらに遠い肺胞とその順に到達しにくくなります。上気道のイナビルは肺胞よりもかなり多い量ですが、そのイナビルは早々になくなってしまいます。この状態で5日間有効となるためには肺胞に残ったイナビルが徐々に血中に移行し、血管を通して上気道に達し、ウイルスが感染した細胞に働きかける必要があります。かなり微々たる量のイナビルとなります。5日間吸入するザナミビル(商品名リレンザ)は毎回上気道に多量の薬剤が到達するので5日間効果が維持できるというのは理解しやすいですが、肺胞に達した少量のイナビルが血液を通して全身に広がって、それで5日間効果を維持するというのは信じがたいことです。

 

 またもうひとつの問題もありました。イナビルの国内治験はオセルタミビル(商品名:タミフル)と比較する形で行われ、タミフルと比べて効果に遜色がなかったという理由で認可されました。効果に差がなかったら効果があるように思ってしまうのですが、この治験が行われたのは2008年から2009年にかけてのインフルエンザ流行期です。インフルエンザウイルスは香港型とソ連型が存在していましたが、このシーズンはタミフル耐性ソ連型インフルエンザウイルスが大流行した年でした。実際はタミフルが処方されていても発熱が長引く方も多くおられました。このシーズンの治験でタミフルと効果に差がなかった、耐性ウイルスのため効果が出にくいはずのタミフルと同等の効果があったというのは、実際はほとんど効果がなかったのではないのかという結論になるはずです。イナビル販売時にメーカーの方にも問い合わせましたが、明確な回答は頂いていません。

 

次:イナビル販売後の報告

本編に戻る


このサイトの他のページをご覧になるには

 → サイトマップ

 

アンケート

ご協力ください。


All for children...

すべては子どもたちのために

 

子供の病気のときは多かれ少なかれ心配なことが生じますが、このときの不要な心配がこのサイトを見ていただくことで減れば幸いに思います。

 

<サイトマップ>

 

当サイトのQRコード